DINKSとは選択子なしとも呼ばれる、子どもを持たない人生を選んだ夫婦のことです。Double income no kidsの頭文字を取ってディンクスと呼ばれます。
子なしは相続問題で不幸になる場合がある、と言われています。せっかく共働きで築き上げた財産を守るにはどうすべきなのか、DINKS当事者である筆者がまとめました!
結論としてはお互いとその親族の人生を守るためにも遺言書の準備は必須です。ただし、「遺留分」があるので、配偶者の家族と良好な関係性を築いておくのも重要です。
共同財産という考え方は存在しない
入籍後に夫婦で築いた財産は、夫婦のモノです。しかし、税法上で共同の財産というものは存在せず、必ず妻または夫の財産になります。
例えば、夫の給料を全額生活に使い、妻の給料を全額貯蓄することで人生を20年送ったとしましょう。妻の稼ぎにもよりますが、手取り500万円だとすると、妻の口座に1億円貯まります。
そして、妻が亡くなったとき、相続の問題が発生するのです。
ちなみに、相続人の話とは別で「相続税」という別の問題があります。でも、配偶者であれば1億6000万円または法定相続分は、配偶者控除で相続税はかかりませんので、税金に関しては、一般市民ならひとまず安心ですね。
相続人は配偶者の家族
遺言書がない場合、法定相続分というのが法律で決められています。法律で決められた分で分けましょうという考え方です。
DINKS(選択子なし)の場合、相続人は自分と配偶者の家族です。
ご両親又は祖父母が健在の場合、配偶者が3分の2、両親(両親がいなくて祖父母が健在の場合は、祖父母)が3分の1の権利を有します。両親または祖父母が2人とも健在でも、3分の1の権利を二人で分けて、6分の1ずつの分配になるので、配偶者分がご両親や祖父母の数によって、減ることはありません。
ご両親と祖父母が亡くなっている場合は、配偶者の兄弟姉妹が権利を有します。配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1の権利を有します。
ここで気を付けるべきは、代襲相続(だいしゅうそうぞく)です。
例えば、配偶者の両親はすでに亡くなっており、配偶者に兄弟が2人いて、そのうち1人が亡くなっているとします。亡くなった兄弟に子どもがいると、代襲相続というものが起きます。配偶者の兄弟1人と亡くなった配偶者の兄弟の子ども(甥/姪)が相続人になるのです。
DINKSで配偶者が亡くなった場合でも、ご両親や兄弟が相続人であった場合、良心によって相続放棄して、配偶者が全額相続できるようにしてくれることも多いと思います。
でも、配偶者の、兄弟の、子どもはどうでしょう?家族関係にもよりますが、「もはや知らない人」であることが多いはず。そんなところから「遺産がもらえるらしい」となったとき、「もらえるものは、もらってやろう」と思うケースもあるのではないでしょうか。一方、亡くなった本人も、配偶者と築いた財産を甥や姪に渡すことを、望むでしょうか?
遺言書で配偶者にお金を残す
遺言書がないと、場合によっては、望まない法定相続人に、配偶者と2人で築いた財産を奪われると言っても過言ではない状況になります。
そこで大切なのが、遺言書です。遺言書に明記すれば、兄弟や甥や姪が相続の対象となることはありません。遺言書は、正式に認められる書き方が決まっているので、正しい書き方で書くようにしましょう。ドラマのように、ただ遺言書と書いておくだけではだめです。
でも、遺言書を書いても、全額配偶者が相続はできないのを知っていますか?
実は、遺留分というものがあり、全額配偶者のものにすることはできない決まりがあるのです。
相続の遺留分で配偶者の親にお金を払わないといけない
遺言によっても奪えない遺産の一定割合を「遺留分」と呼びます。たとえ遺言書で「遺産は全て配偶者へ」とあっても、遺留分の権利保持者が請求すれば、「遺留分」を配偶者は権利者に払わなくてはなりません。
遺留分の権利は、配偶者、子ども、直系尊属(父母・祖父母)にあり、兄弟姉妹は対象外です。
相続財産は、たとえ配偶者の遺言があったとしても、配偶者と父母が相続人の場合、配偶者が3分の1、父母が6分の1は相続する権利があります。ちなみに、父母両方健在でも、6分の2になるわけではなく、6分の1を半分にして父・母に分配される考え方です。
もし1億円の財産が配偶者にあったとすれば、そのうち1666万は、配偶者の両親の手に渡ってしまうのです。もし、本当に配偶者個人のお小遣いであればいいですが、2人で築いた財産の一部だったとすると、遺された者としては不公平感を感じざるを得ません。
とはいえ、遺留分は請求しないともらえませんので、日ごろから配偶者のご両親と良好な関係を築けていれば、ご両親の人間性次第ですが、請求されるということはなさそうですね。
全財産を配偶者に遺すために「家族信託」を使おう
家族信託は契約に50万~100万円の手続き費用が必要になりますが、自分の希望通りに相続をすることが可能になります。財産によってはもっとお金がかかるようです。でも、これは相当な財産がある人だけかなと思いました。気軽にできるものではないですね。
全財産を配偶者に遺すために「生命保険」を活用しよう
生命保険金は相続の対象外で、受け取り人に指定した人にお金が届きます。
全財産を生命保険にして、配偶者に遺すなんてことは現実的ではありませんが、方法としてはありえることのようです。ちなみに、みなし相続金になるので、冒頭に記載したように1億6000万を超えてくると問題になるかもしれませんね。
配偶者の次の相続のことも考えよう
選択子なしであるDINKSとしては、まず、自分にもしものことがあったとき、確実に配偶者に全財産を残したい。それは、2人で築いた財産だから、当然のことだと思います。また、配偶者控除もあるので相続税が莫大にかかったりすることもなく安心です。
でも、その配偶者も亡くなったときはどうでしょう?
自分の財産をすべて引き継いだ「配偶者」の「家族」が相続人になります。自分の財産だったものも自分の家族には届かなくなるのです。ちょっと不思議な感じがしますよね。また、その時は相続税も一気にかかるので自分の兄弟などが相続するときには、高額な相続税がかかるリスクも出てきます。
「二次相続」と言いますが、配偶者が亡くなったときのことも考えて、相続については考えたいところですね。
まとめ
お金の問題は非常に難しく、時として配偶者の人生を狂わせてしまうこともあります。
自分の親や兄弟なら、配偶者にひどい扱いはしないかもしれません。でも、兄弟の配偶者の考えはどうでしょう?直接の相続権はないとしても、兄弟の子どもである姪や甥は相続人となり得ます。関係が遠くなればなるほど、自分の気持ちを汲んでもらえない可能性は高まるでしょう。
自分が亡くなったとき、ただでさえ苦しい気持ちの中、相続によってさらに絶望を与えないようにしたいですね。
選択子なし・DINKSとして二人で築いた財産は、2人が納得いく形で最期を迎えられるように、年齢に関係なくしっかり準備をしておきたいところです。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました!